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アヴァンティ 2005年 10月号

■お洒落は親孝行

お父様はお元気ですか。そしてあなたとは仲良しですか。

私の父は20年も前に亡くなりましたが、残念ながら私と父とはあまり仲良しではありませんでした。私の子供時代は親子でフランクに話しをすると言う習慣もなかったのです。一度も向かい合ってきちんと話をした事がないのも、理解し合えなかった理由の一つだったかもしれません。私は勝手に父も私を好きではないと決めつけていました。容姿も成績も人より劣っている娘が可愛いはずはないなんてひがんでもいました。

何でいきなりこんなことを書くのかですって。
古い雑誌を整理していて偶然めくったページに「娘が病気の父親を見舞うときにお洒落をしていくと喜ばれる」と書いてあったのです。「ハッ」としました。思い当たることがあったのです。父が亡くなる少し前に新しい服を着て病院に行ったのです。普段、何事にも感心を示さない父が「買ったのか」と一言ぽつり。今頃気づいても遅いのですが、父はきっと嬉しかったのですね。

他にも思い当たることがあります。私は学校を卒業してすぐに結婚したので生活は決して豊かではありませんでした。イエはっきりと言えばとても貧乏でした。いつも夕食時には数人の友人達がいて食事をして行くので、給料はあっという間に食費に消えました。今考えればどうしてそのような生活が続けられていたか不思議です。当時、私は着るものも含めて自分のものは何一つ買えませんでした。それが辛いとも思っていなかったのですが、一度だけ父が私にそっと封筒を手渡してくれました。「生活費にするな」とぼそっと言いながら・・・。
その言葉をちゃんと理解できなかった私は、当然食費に全部使ってしまいました。今だったらわかります。自分の娘がいつも同じ服をきて所帯染みていくのがどんなに嫌だったか。父自身はお洒落でしたから。

皆さん破れたジーパンも良いけれど、たまにはお洒落をしてください。娘が奇麗にしているのは何よりの親孝行ですよ。

私のように、いい年をしてパソコンの前で涙するなんてことのないようにと祈りたい気持ちです。


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