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アヴァンティ 2005年 12月号
■シンプルに生きたいけれど
今年の夏、私はダニに噛まれて全身が水玉模様になった。
マンションの改装で一夏中窓が開けられなかったのがダニ発生の原因。物が捨てられず掃除嫌いな性格もダニの繁殖に拍車をかけた。
私は特に紙類に未練があって、またいつかまた読むつもりの古いメモや雑誌類をぎっしりと小部屋に詰め込んでいて、そこに出入りするだけでなんだか身体が痒くなるのだ。
困った事に人間を長くやっていると、いつの間にか役立たずの物ばかりが部屋にのさばって、こちらの方が小さくなって生活している。
今度こそは「思い切って捨てるぞ」と決心した。
そう考えると、物だけではなく人との関係もねずみ算式に増えていて、生活の時間が脅かされていることにも思い至った。
顔も名前も良く覚えてない人達との年賀状のやり取りに意味なんてあるのだろうか。ほとんど知らないような人から届く披露宴、出版パーティやお稽古の発表会などの招待状。格好つけの性格ゆえに増々自分の時間を失っていく。
これからは付き合いの悪い女と言われるのを覚悟し、今後招待状には不参加に印をつけて送りかえそう。「行きたい所にしか行かんぞ」。
ついでに心地よくない人間関係もバッサリと切ろう。
会話が夫や姑の愚痴だけの同級生。コロコロと仕事を変えて、その度に化粧品や下着を売りつける知人。会えば私の元気がしぼんでいく全ての人たちよ、「さようなら」。今すぐ携帯の番号を消去しよう。住所録からも抹消だ。
「私も真似をします」ですって?お若いの、ちょっとお待ちなさい!
この決心をしたのは長年のおバカな生活が腰にも血圧にもきて、命が危うくなったからなのよ。なんとか仕事を続けてこられたのは、考え方の違う人達との付き合いや無駄や無理が人生の先生だったからですよ。ダニに噛まれたり人に噛まれたりするから頭も使おうというもの。
若い人はめげずにもっともっと沢山の理不尽とお付き合いなさいませ。
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