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アヴァンティ 2006年 1月号

■緊張するのも能力よ

とにかく上がり症である。初めてテレビに出た時は頭の中が真っ白になり、心臓が口から飛び出そうになった。ドキドキせずに喋れるようになるまで8年くらいはかかったと思う。「心臓にトゲが生えてるでしょ」なんて言う人がいるけど誤解ですっ!

ところで心臓に毛どころか針金が生えているような若い女性達と出会うことがある。

最近パネルディスカッションのコーディネーターを仰せつかった。打ち合わせの時に、それぞれの分野でプロであるはずのパネリストの方々は意外にも皆さん緊張なさっていた。その中で一人リラックスしているのは司会の女性。私たちが真剣に打ち合わせしている時も「私、明後日が誕生日なんですぅ」なんてどうでもよいおしゃべりをして、私の心をドクロマークにした。彼女には開会を知らせて私を紹介する台本が用意されていたので、すでに暗記してしまっているのだと思っていた。

始まって驚いた。棒読みの上に何度もひっかかるのだ。明るく盛り上げて壇上に呼び出してもらえたらありがたいと期待していたが、外れったらありゃあしない。会場はシーンと白けている。それにしてもあの落ち着きはなんだったのだろう。若い娘の根拠のない自信は恐い。

昔のことを思い出した。クリスマス時期にテレビの料理取材が入ったのだ。ディレクターと話しているうちに「若い人の料理が面白いかも」と事務所の新人が出演することになった。

私は自分が出演するより緊張して「大丈夫?」と声をかけるけれど新人さんは「?何で」という顔をしている。本番中の「この料理は得意なのですか?」というレポーターの質問にも「今、即席で教えてもらいました」なんて自然体である。無事撮影は終わり、わたしは「度胸があるねー」と感心して褒めた。

ところがである。何ヶ月過ぎても彼女は仕事を覚えようとする気配さえもない。向上心が希薄でとんちんかんのままだ。

「ああ、そうか」と私は気づいた。「緊張して上がる」のは能力なのだ。自分の発言や態度が人に迷惑をかけるのではないかと緊張する。あるいは自分よりずっと知識や技術が上の人がいるのにと思って上がるのだ。緊張もせず上がりもしない人って「想像力欠乏症」という病なのかもしれない。

「上がり症」ですって告白したつもりが自分の想像力を褒めたことになって、やっぱり私って心臓にもトゲが生えているのでしょうか。