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2000年10月24日放送

■その場の空気

長い間仕事していたらいろんなことがあるけれど昔こんなことが有りました。

ある公民館から電話で「老人クラブで料理教室をしてください」参加者はほとんどが男性と言う事で、お歳をめした男性が料理を習おうと思う気持は有難いことなので喜んでお受けしました。予算が無いと言う事なので「交通費だけで充分ですよ」とちょっと良い格好もしました。鉢盛りの作り方とのリクエストも料理を作った事の無い男性にはちょっと無理かなとも思ったけれど、せっかくだから出来るだけ期待に答えようとがんばりました。

教室の間私は手だけで無く足まで使いたいくらいに大忙しで、私がほとんどつくってしまったような料理教室になってしまいましたが、なんとか綺麗な鉢盛りを作る事が出来ました。さあ皆で試食をしょうとなったとき代表者のひとが「先生は帰って下さい」という。「どうして」と思ったけれど追い出されるようにして数千円いただいて公民館を出ました。坂道をとぼとぼと歩いていて気がつきました。冷蔵庫に一杯ビールが入ってたことを!そうか、最初から私に鉢盛りを作らせる計画だったのかとやっと気がつきました。頭が良いですね一番安上がりな宴会の仕方です。二、三日口惜しかったけれど、いつもは良い思いをする事の方が多いのだからこういう事があってバランスが取れているのだと考えて気持を納めました。ただ不思議なのはその時二十名くらいの方がいらしたのだけれど誰一人としてそんな事は失礼な事だから辞めようと思ったり言ったりした人が居なかった事です。

「すいません」と言うような表情だけでもしてくれる人が居たって良いのにねー

変だって解り切っているのになんとなくそのまま事が進んで行ってしまうって結構ありますよね。最近銀行や会社が破たんしましたが、新聞等で読むとどうしてそんな事をと思うような、危ない投資をしたり回収不能とわかっているのに貸し付けたり、上手く行かなくて当然と思われるような内容で破たんしています。なぜ途中でそれを阻止出来なかったのか、止められる人が居なかったのか不思議です。

そこでいつものように不思議解決のために書棚を探しました。有った有った。

山本七平さんの『空気の研究』 文芸春秋社です。こんな事が書いてありました。「物事の最終的決定は議論の結果では無くて「空気で有る」。あの場の空気では何も言い出せなかったという風に言われる、つまりその場を支配するムードですね。空気が全てを制御し統制し、強力な規範となって各人の口を封じてしまう現象の事でこれは昔も今も変わりが無い。」うーん解る解る。そういう場所に居合わせた事は誰でも有りますよね。

山際の鉢盛り事件ももしかしてそんな空気の元に決定されて実行されてしまったのに違い有りません。小さな事はともかく、国の政策のが決められるような時にこの様な「空気」が醸し出されらどうなるでしょう。恐いー

てなふうに個人的恨みを大袈裟な事に結び付けて憂さをはらす山際でした。

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